アルツハイマー型認知症(ATD)の薬物治療➁コウノメソッドの場合

投稿日:2023.06.08

コウノメソッドにおける薬物治療の特徴は認知機能改善薬のみに頼らない点です。中核症状、陽性症状、陰性症状の中で何が主体なのかを見極め、抗精神病薬などと組み合わせながら、それぞれに合わせた処方をします。介護者には、徘徊や怒りっぽさ、不眠などの陽性症状の有無を必ず確認しておきます。

もくじ
どの症状が強いかで薬を選択
ドネペジルは低用量で処方
進行にともなう症状の変化と推奨薬剤
タイプ別・アルツハイマー型認知症の処方分類
少量の定型抗精神病薬で負担を軽減

どの症状が強いかで薬を選択

アルツハイマー型認知症(ATD)には、3つのタイプがあるとされています。
「中核症状が主体で周辺症状のないタイプ(シンプルタイプ)、陽性症状が強いタイプ(ポジティブタイプ)、陰性症状が強いタイプ(ネガティブタイプ)の3つに分けた処方を基本とする」「ポジティブタイプに最初から認知機能改善薬を用いると、陽性症状が悪化して介護困難に陥る。まずはチアプリドなど抑制系の向精神薬で、陽性症状を抑える」。
とあり、症状の見極めが大切であることがわかります。

ドネペジルは低用量で処方

「ドネペジルの使用量は、1日5㎎または10㎎と定められている。しかし、河野によれば、高齢者が安全に服用でき、症状が安定する平均用量は3.6㎎だという」「メマンチンとの併用も効果的だが、歩けなくなるなどの副作用が出やすく、注意が必要だ。陽性症状が強い場合は、興奮作用が弱いガランタミンやリバスチグミンが向く」。

 

進行にともなう症状の変化と推奨薬剤

アルツハイマー型認知症は、中期から陽性症状が現れるケースが多いですが、「ドネペジル(商品名:アリセプト)」は興奮系の認知機能改善薬なので、これを増量するのは逆効果です。その場合は、認知機能改善薬を一時中止または減量して、抑制系薬剤などを一時的に投与します。

興奮症状が出始めたら、ドネペジル以外の薬に切り変えましょう。

タイプ別・アルツハイマー型認知症の処方分類

下の表が、アルツハイマー型認知症(ATD)を症状から3つに分類し、基本処方をイメージした図です。なお、表内の「3㎎+5㎎」は、「朝3㎎投与+夜5㎎投与」を表します。

周辺症状がないシンプルタイプは、ドネペジルを3㎎から投与。効果が不十分であれば、メマンチンを併用します。それでも効果が見られなければ、ガランタミンに切り替えます。

陽性症状が強いポジティブタイプは、まず向精神薬で陽性症状を抑えます。その後、ドネペジルより興奮作用が弱いガランタミンを、まずは少量から投与開始します。

陰性症状が強いネガティブタイプは、ドネペジル3㎎から投与開始。効果が不十分であれば、興奮系の脳循環・代謝改善薬である「ニセルゴリン(商品名:サアミオン)」を併用し、それでも効果がなければガランタミンに変更します。

 

少量の定型抗精神病薬で負担を軽減

介護者にとって、大きな負担となるのが易怒(怒りっぽくなる)や不眠、暴力、介護抵抗といった陽性症状です。
「このような症状に対して、一般にはリスペリドンなどの非定型抗精神病薬がよく用いられる。しかし、河野によれば、リスペリドンは、姿勢の傾斜などのパーキンソニズムを招きやすいという。コウノメソッドでは定型抗精神病薬が中心で、アルツハイマー型認知症では、チアプリドが第一選択となる。もとは脳梗塞後の易怒や興奮を鎮めるために使われる薬で、副作用が出にくく、高齢者にも使いやすい。

介護者にとって負担が大きい症状に対して、改善されることは介護の在り方にも影響を与えます。本人にとっても副作用が出にくいことはよい条件になります。
「中核症状、周辺症状を問わず、コウノメソッドで推奨する薬を一覧にした。失語症候群は、意味性認知症(SD)、進行性非流暢性失語(PNFA)など、失語症状が出る認知症を指す。なお、薬剤の系統は、「精神活動を活性化したい」「興奮を鎮めたい」「意識を覚醒させたい」など、目的によって明確に分けられている」。
いずれの薬剤も少量から投与し、介護者が満足できる状態になったら、それ以上の増量は避けます。もし、嗜眠(強い刺激がなければ覚醒反応しない状態)、食欲低下、姿勢の傾きなどの症状が現れたら、過鎮静と考え、すぐに減量します。

(『せんぶわかる認知症の事典』河野和彦氏監修から引用)

認知症の投薬については必ず専門医に相談し、用法用量を守って正しくご使用ください。コウノメソッドの認知症薬物療法について詳しくはこちら(外部リンク)

コウノメソッド・認知症薬物療法マニュアル2016

 

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