脳血管性認知症(VaD)の発症リスクと診断基準

投稿日:2023.06.08

脳血管性認知症(VaD:vascular dementia)の発症リスクは、高血圧、糖尿病などの生活習慣病です。予防には、健康的な生活が何より重要だといえます。ここでは、脳血管性認知症(VaD)の発症を促進する危険因子と臨床診断基準、さらに症状を進行させないためのポイントについて解説します。

もくじ
高血圧、糖尿病などによる動脈硬化が原因で起こる認知症
脳血管性認知症(VaD)の診断基準(NINDAS-AIREN)
症状を進行させないために不可欠な血圧管理

高血圧、糖尿病などによる動脈硬化が原因で起こる認知症

脳血管性認知症(VaD)の原因となる脳血管障害(CVD)は、動脈硬化が基礎にあって起こります。動脈硬化とは、血管の壁が硬く厚くなり、血流量が低下するもので、最大の危険因子は加齢です。歳を重ねるとともに誰にでも起こることで、脳の動脈では、10代から動脈硬化がはじまるといわれています。

誰にでも起こる動脈硬化ですが、その進行を加速させるのが、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病です。中でも、高血圧が重要な危険因子だと考えられています。高血圧が長期間続くと、認知症になりやすいラクナ梗塞やビンスワンガー病を引き起こすためです。

高血圧、糖尿病、脂質異常症といった、脳血管性認知症(VaD)の危険因子は、アルツハイマー型認知症(ATD)の危険因子とも重なっています。両者が合併する混合認知症も多いことから、その関連性が注目されています。

ごくまれに、遺伝性の脳血管性認知症(VaD)もあります。19番染色体の異常により、ビンスワンガー病から認知症を引き起こすもので、「CADASIL(カダシル)」とよばれています。

脳血管性認知症(VaD)の診断基準(NINDAS-AIREN)

脳血管性認知症(VaD)は、認知症があり、脳血管障害が症状と画像検査で確認できること、そして両者の関連が明らかであることが、診断の必須条件となっています。

probable VaD(脳血管性認知症ほぼ確実)
以下の全てを満たす

1. 認知症
記憶と以下の2つ以上の認知機能障害を満たす。
見当識、注意、言語、視空間認知、遂行機能、運動調節、学習
除外基準として意識障害、せん妄、精神病、重度失語、神経心理検査に支障のある運動感覚障害、全身疾患やアルツハイマー型認知症など他の脳病変による症状

 2. 脳血管病変
神経学的診察で局所徴候(片麻痺、顔面麻痺、バビンスキー徴候〈※1〉、感覚障害、半盲、構音障害)がみられ、画像検査で関連する脳血管病変(多発大血管梗塞、単一の戦略的部位の梗塞〈角回、視床、前脳基底部、後大脳動脈や前大脳動脈領域〉、多発する基底核や白質のラクナ梗塞、著明な脳室周囲病変、それらの合併)

 3. 上記2項目の関連:以下の1つ以上を満たす
(a)脳梗塞が判明してから3カ月以内に認知症を発症
(b)認知機能の突然の憎悪または動揺する、階段状に憎悪する

上記を支持する所見として
(a)早期からの歩行障害
(b)不安定性と理由のない転倒の増加
(c)頻尿、尿意切迫
(d)仮性球麻痺(※2)
(e)人格や気分の変調、無為、抑うつ、感情失禁、精神運動遅滞

支持しない所見として
(a)早期からの記憶障害、言語障害や失行、失認
(b)神経局所徴候の欠如
(c)画像検査での原因となる脳局所病変の欠如

possible VaD(脳血管性認知症の疑いあり)
局所徴候を有する認知症患者のうち

確定的な脳血管障害病変のないもの
はっきりとした時間的相関のないもの
緩徐な発症または多彩な経過(平衡状態を示したり改善傾向)を示すもの

definite VaD(脳血管性認知症確定)
局所徴候を有する認知症患者のうち

(a)probable VaDを満たす臨床所見
(b)生検や剖検で得られた脳血管障害の組織所見
(c)年齢に比して神経原線維変化や老人斑が著明でない
(d)認知症の原因となりうるその他の臨床的病理的所見がない

※1 バビンスキー徴候…足の裏をとがったものでこすると、足の指が反射的に反る反応。運動ニューロン障害のサインのひとつ
※2 仮性球麻痺…嚥下障害や構音障害を引き起こす運動ニューロンの障害。大脳皮質の運動野から送られる情報が、延髄の左右にある球部に、正常に伝わらない
「Vascular dementia:diagnostic criteria for research studies. Report of the NINDS-AIREN International Workshop.」Roman GC, et al. 1993より引用/日本語訳は『アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 認知症 神経心理学的アプローチ』辻 省次総編集、河村 満専門編集、2012

症状を進行させないために不可欠な血圧管理

脳梗塞、特に無症候性の脳梗塞を繰り返していると、認知症のリスクが高くなります。脳梗塞の再発を防ぎ、症状を進行させないために欠かせないのが血圧管理です。

日本高血圧学会では、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血といった脳血管障害発症後の血圧管理の目標値を定めています。降圧目標値は、発症後の時間や重症度、発症前の血圧値を考慮して定められており、適切な降圧薬も指定されています。また、血圧管理のほか、血糖値や脂質異常症などの改善も、脳梗塞の再発を防ぐうえで、重要だと考えられています。

血圧管理と認知機能との直接的な関連については、60歳以上の高血圧患者を対象に、降圧薬とプラセボ(偽薬)を用いた比較試験が行われています。降圧薬を使ったグループは、MMSE(エムエムエスイー:認知症のスクリーニング検査)が軽度ながら改善したと報告されています。ただ、80歳以上の高齢者では、血圧管理が認知機能の低下を抑制しなかったとの報告もあり、さらなる研究が必要とされています。

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