べっく・メディカル・クリニック
佐藤裕道医師インタビュー

投稿日:2024.01.11

1965年、静岡県沼津市に生まれた佐藤裕道(さとう・ひろみち)先生は、信州大学医学部を卒業して神経内科(現・脳神経内科)へ入局した。そこから一般内科医、脳神経内科医として地域医療への取り組みが始まる。
あらゆる生活習慣病治療に加え、消化器疾患、呼吸器疾患、不定愁訴、認知症など幅広い訴えに漢方薬などを駆使して診療している。めまい外来では年間700人以上の患者さんを診療。民間療法にも造詣が深く、西洋医学に加えて栄養療法やサプリメントを駆使しながら日々の診療にあたっている。べっく・メディカル・クリニック勤務。日本神経学会専門医、日本内科学会認定医、日本東洋医学会会員。コウノメソッド実践医。(取材日2023年11月30日)

もくじ
めまいの診療も行う、地域に根差した脳神経内科医
沼津へ帰って、漢方とコウノメソッドに出会う
めまいの原因に気づいて話題の書籍を出版

めまいの診療も行う、地域に根差した脳神経内科医

Q.医師を志した動機をお聞かせください。

私の父は、鍼灸師(資格としては按摩鍼灸師と柔道整復師)でした。自宅で「佐藤鍼灸整骨院」を開業していたので、私は父が治療する姿を身近に見て育ちました。祖父も鍼灸師です。中学時代は柔道をさせられていましたから、親は私を整形外科医にならせたかったのでしょう。浪人を2年させてもらえたのも、医学部へ入ってほしかったからだろうと思います。1年目は名古屋の予備校の寮に入り、2年目は東京の予備校の寮に入りました。結局信州大学医学部に入学したのですが、特に長野県に縁故があったわけではありません。当時は共通一次試験の結果で、ある程度選べるところが決まってしまいますから、環境のいい信州にしたのです。大学時代はテニス部に所属していました。

Q.信州時代の思い出をお聞かせください。

最初は整形外科へ進もうと思っていたのですが、やがて外科に向いていないことがわかってきました。手術室に入ると、お腹が痛くなってしまうのです。そこで内科にしようと考え、神経内科に意識が向かいました。神経内科は、脳脊髄を扱いますから整形外科で扱う痛みやしびれに対して、若干近い要素を持っているように感じられたからです。学生にとって、脳はわかりにくい器官です。消化器や呼吸器に比べて、脳はわかりにくい臓器だったので、興味を感じて神経内科にしました。

神経内科は現在、脳神経内科と名称が変わっています。心療内科や精神科と区別がつかないので、名称に「脳」をつけたのです。順天堂が最初だったと思いますが他の大学もそれに倣い、学会も名称変更しています。信州大学医学部の第三内科へ入局した私は、研修医として長野県内の関連病院で働き始めました。長野県は長寿県で、県民の健康意識が高く、医師たちは地域医療に熱心に取り組んでいました。

Q.沼津へ帰ってこられたのはいつ頃ですか?

1999年、30代半ばの頃です。沼津の西島病院という脳神経外科の病院に勤務しました。きっかけは、父親が原因不明のパーキンソニズムを発症し、入退院を繰り返すようになったからです。母が介護していましたが、私は一人っ子なので、手伝う目的もあって信州から沼津へ帰ってきました。父は、パーキンソン病の薬を出され、副作用で歩行障害を起こしました。めまいでフラフラになったり、吐いたりと、とにかくパーキンソン病の薬が合わないのです。地元の医師も「何だろう」と首をひねっていました。当然、鍼灸の仕事はできません。やがて亡くなったのですが、結局生前診断はつきませんでした。

2005年から、私は今の「べっく・メディカル・クリニック」に勤務し始めました。ここは、消化器がメインのクリニックです。西島病院時代の私は、脳神経外科では扱えない症状を脳神経内科医として診ていました。頭痛、めまい、不定愁訴、認知症などです。今のクリニックに誘われたのも、私が消化器内科では扱えない病気を担当できたからだと思います。

 

沼津へ帰って、漢方とコウノメソッドに出会う

Q.漢方を使うようになったのはいつ頃からですか?

沼津に戻ってすぐです。脳神経内科医として不定愁訴を扱うことが多かったので、少しでも引き出しを増やそうと思って始めました。以前から自分でも、風邪のときに葛根湯を飲むなど漢方薬を使っていたのです。今のクリニックに移ってからは、お隣の小島薬局さんが漢方に積極的に取り組んでいらっしゃって、そこの薬局長さんに誘われて漢方の勉強会に出るようになりました。もともと、メーカーの主催する漢方セミナーにもよく出ていて、いろいろな科の先生方が参加していらっしゃるので「面白いな」と思っていたのです。父が鍼灸師だったこともあり、中国医学には親近感があったのでしょう。サプリメントもそうですが、漢方薬は自分でもよく試します。種類としては100種類くらいありますが、ほとんど飲んだのではないでしょうか。味、飲みやすさ、効き具合など、体験してみないと患者さんに勧められませんから。降圧剤など西洋薬は試せませんが、漢方薬は下剤も全部試しています。

Q.コウノメソッドによる認知症治療を始めたきっかけは何ですか?

今のクリニックで働き始めてからです。2008年になって、私はコウノメソッドに出会いました。そこで、父はレビー小体病だったとわかったのです。薬が合わなかったのは、薬剤過敏性があったからでしょうし、寝言で大声を出すのはレム睡眠障害があったからだとわかります。ネットで「ドクターコウノの認知症ブログ」と出会い、長年の疑問が解けたのです。父親のことがあったから、私にはコウノメソッドがすごく納得できました。

それ以来、コウノメソッドの実践医として、認知症の診断と治療はコウノメソッドで行っています。かなり古参の実践医ではないでしょうか。わからないところは、河野先生にメールで問い合わせますし、常々河野先生の動画を見て勉強しています。コウノメソッドを身につけてから、いちばん変わったのは薬の用量ではないでしょうか。抗認知症薬は、ものすごく少ない量で使います。有効量(維持量)で使ったことは、ほとんどありません。低用量で様子を見て、続けるか止めるかを考えます。上げなければならないと感じたら、ほかの方法を探します。薬局の人は苦労していますよ。半錠とか、4分の1錠といった処方をしますから。

Q.地域の高齢者の治療では、どのようなことを心がけていますか?

気をつかうのは75歳以上の高齢者で、免許証の更新時に認知症の簡易テストに引っかかった人です。医師の診断を受けないといけないわけですが、認知症と診断すれば運転できなくなります。ここらは車がないと生活できないので、免許証を取り上げるのはかわいそうです。もちろんダメな人にははっきり「もう運転は止めましょう」と言いますが、グレーゾーンの人が少なくありません。そのような人には「フェルガード100M」を勧めて、認知機能の維持に努めます。「夜間は運転しない、雨のときも運転しない、遠距離はダメ、自宅周辺の慣れた道だけにして」と条件をつけるのです。もちろん、任意保険には絶対入ってもらいます。そのようなかたちで、半年ごとに認知症検査を続けている高齢ドライバーがたくさんいます。

あと、高齢者の多くは栄養状態が悪いという点に注目しています。認知症を診断する場合、いきなり脳のせいにするのではなく、栄養状態、生活習慣、これまで受けてきた内科的治療(薬)を問題にしないわけにはいきません。向精神薬ではなく、栄養学の立場から治療したほうがよほどいいことが少なくないのです。

めまいの原因に気づいて話題の書籍を出版

Q.めまいの診療ができる先生ということで有名だそうですが?

私は2019年7月に『脳神経内科医が書いた 誰も知らなかっためまいの治し方』(現代書林)という本を出しました。これは私が長年、めまいの患者さんを診続けているうちに、不思議な共通点があることに気づいたことが発端でした。MRIではわからないのですが、CTで頭の断面を撮影すると、こめかみの部分の筋肉が厚くなっている人が少なくありません。それらの人の多くに、歯ぎしり・歯の食いしばりがあったのです。それが、めまいや頭痛の原因になっていました。この症状は、歯科と連携しなければ、なかなか良くなりません。歯の不調は、鼻や耳や頭などの病気の原因になります。上顎洞の副鼻腔炎は、歯根周囲炎から波及している場合も多く見受けられるのです。それを医師にもわかってもらいたくて、私はこの本を書きました。めまいや歯ぎしりをどう治すかは、これからも続く私の研究課題です。

Q.サプリメントはどのようなものを使っていらっしゃいますか?

「フェルガード」、「Mガード」、「Vキュア」の3つが多いですね。漢方と同じようにサプリメントも、私は患者さんに勧める前に必ず自分で試します。フェルガードは、先ほど話したように100Mを、免許証の更新に引っかかった人に勧めています。「私も飲んでいますから」と言うのは、いちばんいい勧め方です。

一般の物忘れのほか、「フェルガード100M」がいいのはレビーだと思います。「Mガード」は、アルツハイマータイプの人です。アリセプトでアセチルコリンを増やそうとするより、ニューロンの脱髄を修復したほうがずっといい。ミエリンのことを考えれば、脊髄疾患にもいいと思います。私は、脊柱管狭窄症の人にも勧めています。「Vキュア」は脳血管性認知症だと思いますが、私がいちばん出しているのは、頸動脈エコーでプラークの多い人です。あとはビンスワンガー病(慢性脳虚血)の人にも勧めていきたいと思っています。2023年に発売が始まったばかりですから、これから「Vキュア」の時代が来るかもしれません。

Q.今後の目標や夢をお聞かせください。

めまいを持つ多くの人に、私の本を知ってほしいと思っています。特に、医師に読んでほしいです。歯科の問題がこんなに内科や耳鼻科や脳神経内科、脳神経外科の扱う病気と関わっていることを知ると、病態理解につながります。例えば、歯周病菌の一つが、脳出血と関係しているのではないかという研究が進められています。これまで歯周病菌の毒素が脳へ行く道筋がわからなかったのですが、私は歯ぎしりが関係しているのではないかと思うのです。動脈系は心臓を通りますし、脳血流関門をどう通るのかという問題もあります。ところが、歯ぎしりで静脈系の血流が変化して脳の近くまで行くこと、脳静脈には弁がないことに気づくと、新しい視点が開けるのです。

そのほか、今後は「Vキュア」の効能も臨床的に確かめていくつもりです。西洋医学だけに頼らず、漢方やサプリメントも駆使して、地域医療に貢献していきたいと考えています。

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