行動症状を知る 暴言・暴力/無為・無反応について

投稿日:2023.06.08

行動症状のなかでも、精神的な興奮が強く出て攻撃性が高まる「暴言・暴力」は、認知症患者と介護者との関係を悪化させ、介護疲れを招きます。その反対に気力の低下が強く現れ、活動性が失われる「無為・無反応」は、寝たきりの原因となりやすい症状です。ここでは、「暴言・暴力」と「無為・無反応」の原因と症状について紹介します。

もくじ
前頭葉の障害が原因で、怒りっぽく攻撃的になる「暴言・暴力」
睡眠障害やせん妄が引き起こす夜間の暴言・暴力
意識障害やアパシーで活動量が極端に減る「無為・無反応」

前頭葉の障害が原因で、怒りっぽく攻撃的になる「暴言・暴力」

認知症においては、家族や介護者に対する「暴言・暴力」がしばしば見られ、ケアするうえでの問題となっています。

その原因のひとつは、神経伝達物質の増減などで、怒りの感情が高まりやすくなることです(下図参照)。

前頭葉の前部帯状回(ぜんぶたいじょうかい)や前頭眼窩部(ぜんとうがんかぶ)、脳深部の島(とう)が傷害されると、セロトニンやGABAといった怒りを抑える神経伝達物質が減り、攻撃性を高めるドパミン、ノルエピネフリン、グルタミン、アセチルコリンなどが増加します。そうすると、ささいな刺激でも怒りが高まり、暴言・暴力が生じやすくなります。

さらに、障害を受け入れられない自分への苛立ちや、被害妄想的な心理状態、身体接触を含むケアの不快感、周囲からの不当な扱いなど、さまざまな要因が、挑発的な刺激となります。

特に前頭側頭型認知症(FTD)では、脳全体の司令塔である前頭葉の機能が低下する「脱抑制」により、情動系をつかさどる領域へのコントロールがきかなくなります。そのため、他の病型より、「易怒(いど:怒りっぽくなる)」や「興奮」などの症状の出現が顕著です。

ただし、アルツハイマー型認知症(ATD)や脳血管性認知症(VaD)でも、暴言・暴力は起こります。アルツハイマー型認知症患者は、健常者の10倍近く易怒性が認められ、軽度認知障害(MCI)の時点でも、健常者より高率で易怒性があるという、調査報告もあります。

睡眠障害やせん妄が引き起こす夜間の暴言・暴力

レビー小体型認知症(DLB)では、「レム睡眠時行動障害(RBD)」による、夜間の暴言・暴力が起こります。

脳幹に網の目のように張り巡らされ、運動調節や意識の保持を担う「脳幹網様体(のうかんもうようたい)」の機能低下により、睡眠中も筋活動が抑制されず、夢に呼応する暴言・暴力が生じます(下図参照)。

レム睡眠時行動障害(RBD)では、夢の内容に関連して叫んだり怒鳴ったり、殴る蹴るの暴力をふるったりします。パートナーにケガを負わせたり、自分が大ケガを負うこともあるため、適切な治療が必要です。

意識障害やアパシーで活動量が極端に減る「無為・無反応」

暴言・暴力とは真逆の症状として、「無為・無反応」が現れることもあります。

レビー小体型認知症(DLB)では、意識障害によって覚醒レベルが低下します。ぼんやりとして自主性がなくなり、問いかけへの反応も鈍くなります。そのままでは転倒事故などを招くため、意識を覚醒させる治療が不可欠です。また、レビー小体型認知症患者は、薬の作用が強く出る薬剤過敏性を持っているため、薬剤性の活動低下も起こります。認知機能改善薬のドネペジルが原因と考えられる場合もあり、処方・服用にあたっては注意が必要です。

自発性や意欲が著しく低下する「アパシー」によって、無為・無反応が引き起こされるケースもあります。アルツハイマー型認知症(ATD)では、初期から後期まで高頻度にみられ、脳血管性認知症(VaD)でも多く生じます。意欲が低下し、何事にも関心を示さなくなり、自分が好きだったことにも興味を失ってしまいます。

 

無為・無反応の症状では、本人に、落ち込みや暗い表情は現れません。ただし、認知症では高頻度で「うつ状態」が混在するため、無為・無反応と正しく鑑別することが必須です。

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