軽度認知障害(MCI)の経過

投稿日:2023.06.08

軽度認知障害(MCI:mild congnitive impairment)は、進行するとアルツハイマー型認知症(ATD)に移行すると考えられていましたが、それ以外の認知症にも移行しうることが、明らかになっています。また、必ず認知症を発症するわけではなく、正常化することもあります。ここでは、軽度認知障害(MCI)の症状と変性領域から、つながりのある認知症のタイプを予測する方法を紹介します。

もくじ
軽度認知障害(MCI)はあらゆる認知症に移行する
症状によって将来の認知症のタイプを予測する
高齢は軽度認知障害(MCI)の発症リスク
軽度認知障害(MCI)の判別に認知症治療薬を活用する

軽度認知障害(MCI)はあらゆる認知症に移行する

軽度認知障害(MCI)は、アルツハイマー型認知症(ATD)への進展が多い症例群として、長らく注目されていました。ところが、軽度認知障害(MCI)と診断された57例の病理所見では、アルツハイマー型認知症(ATD)は11%。海馬を中心に神経原線維変化が出現する病態で、軽度のアルツハイマー型ともいえる「神経原線維変化優位型認知症」を含めても2割程度にすぎず、それ以外のさまざまな疾患が含まれていたことがわかりました(下図参照)。

つまり、軽度認知障害(MCI)は、アルツハイマー型認知症(ATD)だけでなく、レビー小体型認知症(DLB)、脳血管性認知症(VaD)など、あらゆる認知症に移行しうる疾患群だといえます。

症状によって将来の認知症のタイプを予測する

認知症発症に早い段階から対応するために、症状によって、将来の認知症のタイプを予測する方法も提唱されています。

軽度認知障害(MCI)は、症状と障害領域(ドメイン)から、上図の4タイプに分けることができます。

記憶障害のみが認められる軽度認知障害はアルツハイマー型認知症(ATD)に、記憶障害以外の認知機能障害がある軽度認知障害(MCI)は、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(DLB)、脳血管性認知症(VaD)につながると予測できます。

高齢は軽度認知障害(MCI)の発症リスク

60歳、または65歳以上を対象にした調査での軽度認知障害(MCI)有症率は、11〜15%だと報告されています。高齢者では、肺気腫や心不全などの身体的な疾患でも、軽度認知障害(MCI)に陥ることがあるため、十分な注意が必要です。

軽度認知障害(MCI)の判別に認知症治療薬を活用する

コウノメソッド(河野和彦が提唱する認知症薬物療法)における、軽度認知障害(MCI)の対処法のひとつが、認知症治療薬のドネペジルを通常の半分量(1.5mg)で1カ月間処方し、症状の変化をチェックする「ドネペジルチャレンジテスト」です。

この方法は、認知機能を評価するスコア「HDS-R(エイチディーエスアール)」がやや低く、患者や家族が軽度認知障害(MCI)の有無を知りたがっている場合に行います。症状が軽減すれば、脳内のアセチルコリンが欠乏しているとわかります。その場合、患者、家族の希望に応じて、ドネペジルの継続またはサプリメント(フェルラ酸含有食品)の服用がすすめられます。

※サプリメントは治療薬ではなく、保険適応も認められません。仕様を検討する際には、専門医に相談してください

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