軽度認知障害(MCI)とは

投稿日:2023.06.08

軽度認知障害(MCI:mild congnitive impairment)とは、認知症の前段階の状態をいいます。認知症の早期治療の重要性が唱えられるようになったことで、このような概念が急速に広まりつつあります。ここでは、軽度認知障害(MCI)の症状と認知症発症リスクについて紹介します。

もくじ
軽度認知障害(MCI)は認知症手前のグレーゾーン
脳の病変は発症の10〜20年前からはじまっている
軽度認知障害(MCI)から認知機能が正常化する例も少なくない
認知症の重症度をはかる「CDR」とは
認知機能が回復する理由

軽度認知障害(MCI)は認知症手前のグレーゾーン

認知症の定義は「進行性の認知機能低下により、日常生活や社会生活に支障をきたす状態」です。しかし、ある日突然、こうした状態になるわけではありません。神経細胞の変性は徐々にはじまり、進行していくからです。

そこで、軽度の記憶障害はあるが、一般的な認知機能は問題がなく、日常生活にも支障のない状態を、軽度認知障害(MCI:エムシーアイ)と呼び、認知症の前段階とする概念が、近年急速に広まっています。

軽度認知障害(MCI)の症例を数年間調査すると、高い確率で認知症に進行することが明らかになっています。このことからも、軽度認知障害(MCI)は認知症と正常の間のグレーゾーン、または認知症の一歩手前の状態だといって差し支えないでしょう。

60歳、または65歳以上を対象にした調査での軽度認知障害(MCI)有症率は、11〜17%だという報告もあります。

脳の病変は発症の10〜20年前からはじまっている

アルツハイマー型認知症(ATD)では、上のグラフで示すとおり、症状がない段階から、アミロイドβ蓄積などの脳の変性がはじまっています。変性が進んで症状が現れはじめると軽度認知障害(MCI)、さらに進行すると認知症を発症します。

軽度認知障害(MCI)から認知機能が正常化する例も少なくない

たとえ軽度認知障害(MCI)と診断されても、全員が認知症を発症するわけではありません。

認知症の重症度を評価するためのスケールのひとつ、CDR(シーディーアール)を用いた調査では、軽度認知症(MCI)に相当する「CDR0.5」から、認知症に進展する人の割合(コンバート率)は、年間で5〜15%と報告されています。

一方で認知機能が元に戻り、のちの検査で正常と判断される人(リバーター)もいます。リバーターの割合(リバート率)は、年間14〜44%です。(下図参照)

認知症の重症度をはかる「CDR」とは

CDR(Clinical Dementia Rating)は「臨床的認知症尺度」ともよばれ、認知症の重症度を評価するものです。記憶、見当識、判断力と問題解決、地域社会(社会適応)、家庭生活および趣味・関心、介護状況の6項目について、評価表に基づいて「CDR0(正常)」、「CDR0.5(認知症疑い)」、「CDR1(軽度認知症)」、「CDR2(中等度認知症)」、「CDR3(重度認知症)」の5段階に分類します。診察上の所見や家族など周囲の人からの情報に基づいて、認知症の程度や、それぞれの機能障害の重症度を判定し、その後の生活支援などのプランを立てることに利用されています。この分類で「CDR0.5(認知症疑い)」が、軽度認知症(MCI)に相当します。

認知機能が回復する理由

軽度認知障害(MCI)と診断されても、その後、認知機能が元に戻ることがあるのは、脳が可塑性(かそせい:回復力)を持つからです。神経細胞のネットワークは常に変化し続けており、ある部分が使えなくなっても、ほかのネットワークをつなぎ換え、情報の伝達を再開させることができるのです。また、動物実験の結果では、運動習慣により、海馬の神経細胞が再生することが明らかになっています。

なお、軽度認知障害(MCI)という概念の成立には、認知機能改善薬が開発されたことも大きく寄与しています。認知機能改善薬は、早い段階から使うほど効果が高いとする報告が多く、認知症の早期診断、早期治療が重要視されています。

キーワード
あわせて読みたい
認知症の定義を知ろう
認知症の種類を知ろう
アルツハイマー型認知症(ATD)とは
アルツハイマー型認知症(ATD)の発症リスク
アルツハイマー型認知症(ATD)の診断基準
アルツハイマー型認知症(ATD)の症状と経過
レビー小体型認知症(DLB)とは

関連記事

みなさまの声を募集しています。

えんがわでは、認知症のご家庭の皆さまと、
認知症に向き合う高い志をもった
医療関係者と介護関係者をつなぎます。
認知症に関するお悩み、みんなで考えていきたいこと、
どんどんご意見をお聴かせ下さい。