認知症の種類を知ろう

投稿日:2023.06.20

認知症のうち約9割は、アルツハイマー型認知症、レビー小体(しょうたい)型認知症、前頭側頭葉変性症(ぜんとうそくとうようへんせいしょう)、脳血管性認知症のいずれかに分類されます。この4タイプのうち、最も多いのがアルツハイマー型認知症で、全体の約半数。従来、日本で多かった脳血管性認知症は近年減少傾向にあり、逆に患者数が増えているのがレビー小体型認知症です。ここでは、主要4タイプの認知症について、その特徴を解説します。

もくじ
認知症の約半数を占める「アルツハイマー型認知症(ATD)」
患者数が増加中「レビー小体型認知症(DLB)」
人格の変化や反社会的行動が現れる「前頭側頭葉変性症(FTLD)」
脳の血管障害がもとで起こる「脳血管性認知症(VaD)」
4タイプ以外の認知症

認知症の約半数を占める「アルツハイマー型認知症(ATD)」

アルツハイマー型認知症(ATD:Alzheimer-type dementia)は、脳に特殊なタンパク質が蓄積し、記憶をつかさどる海馬を中心に、側頭葉、頭頂葉に至るまで、広範囲に萎縮が広がります。記憶をつかさどる海馬がまずダメージを受けることが多いため、初期段階から記憶障害が起きるのが特徴です。

以前はアルツハイマー病(65歳未満)と、アルツハイマー型老年認知症(65歳以上)を区別していましたが、現在は同じ疾患と考えられています。

 

【発症のメカニズム】
●アミロイドβ(ベータ)からなる老人斑が増える
●タウタンパクの凝集隊(タングル)が神経細胞内にできる

脳深部の海馬、側頭葉、頭頂葉が萎縮

記憶障害や、日時や場所がわからなくなる見当識障害(けんとうしきしょうがい)が起きる

【発症要因】
●高齢(70代以上に特に多い)
●ApoE遺伝子の「ε(イプシロン)4」型を持つ人はリスクが高い
●糖尿病などの生活習慣病によってリスクが高まる

【経過】
●老人斑の形成など病理学的変化が出始めてから、およそ20年後に発症する
●個人差はあるが、発症後平均8年ほどで死に至る

患者数が増加中「レビー小体型認知症(DLB)」

レビー小体型認知症(DLB:dementia with Lewy bodies)は、レビー小体という異常構造物が、脳幹や大脳皮質全体に出現し沈着、後頭葉では血流が低下します。認知機能の低下とともに、実際にはないものが見える「幻視(げんし)」や運動障害が現れます。パーキンソン病との関連が深い病気です。

1996年に診断基準が確立された新しいタイプのため、これまでアルツハイマー型と診断されていた人の中にも、レビー小体型が含まれていたと考えられます。今後さらに患者数が増えると予測されているタイプです。

 

【発症のメカニズム】
●大脳皮質全体、脳幹の神経細胞内に、毒性の強いレビー小体が蓄積される
●後頭葉の血流が低下する

脳深部の海馬、側頭葉、頭頂葉が萎縮

幻視、記憶障害、パーキンソニズム(筋肉の固縮など)が起きる

 

【発症要因】
●70代、80代に多い(発症者の年齢層が4タイプで最も高い)
●ほとんどは原因不明
●α(アルファ)シヌクレイン遺伝子、GBA(ジービーエー)遺伝子異常が原因の場合もある

 

【経過】
●初期は幻視が多く、進行するとパーキンソニズムが悪化
●うつ、せん妄などの精神症状を伴うことが多い
●進行が早く、発症後平均7年ほどで死に至る

人格の変化や反社会的行動が現れる「前頭側頭葉変性症(FTLD)」

前頭側頭葉変性症(FTLD:frontotemporal lobar degeneration)は、前頭葉と側頭葉前部が萎縮する認知症の総称です。特に多いのが、前頭葉の外側や前頭葉底面が著しく萎縮して、理性的・社会的なふるまいができなくなり、人格変化や反社会的行動が現れる前頭側頭型認知症(FTD:frontotemporal dementia)。

このほか、言葉の意味が理解できなくなる意味性認知症(SD:semantic dementia)、言葉の意味は理解できるがスムーズに話すことができなくなる進行性非流暢性失語(PNFA:progressive nonfluent aphasia)などがこのタイプに含まれます。

 

【発症のメカニズム】
●前頭葉、側頭葉の神経細胞が減り、萎縮する
●神経細胞内にピック球という異常構造物が出現する(出現が確認できるのは全体の約半数)

理性や行動をつかさどる前頭葉の異常により、人格の変化、行動異常などを発症

 

【発症要因】
●40〜50代と、若年での発症が多い
●ほとんどは遺伝以外の要因で発症する

 

【経過】
●初期は人格の変化、反社会的行動が目立つ
●暴言・暴力から、介護困難に陥りやすい
●徐々に自発性、活動性が低下し、発症後平均6年ほどで死に至る

脳の血管障害がもとで起こる「脳血管性認知症(VaD)」

脳血管性認知症(VaD:vascular dementia)は、脳の血管障害がもとで起こる認知症の総称です。脳血管障害には、脳血管が詰まる脳梗塞(のうこうそく)と、脳血管が破れる脳出血がありますが、認知症につながりやすいのは圧倒的に脳梗塞。最も多いのが、大脳深部の血管が詰まり、小さな梗塞が多発する「ラクナ梗塞」です。多くの場合、梗塞ができてから半年以内に認知症を発症します。

生活習慣病に対する予防意識が高まっている昨今では、減少傾向にあるタイプです。ただ、アルツハイマー型認知症と危険因子が重なるため、両者を合併する症例も多く、注意が必要です。

 

【発症のメカニズム】
<ラクナ梗塞>
脳深部の細い血管が詰まり、周囲の細胞が壊死する
<ビンスワンガー病>
細い血管の閉塞に加え、脳内部の白質の容積が減る
<多発梗塞性認知症>
大小の血管の梗塞が、繰り返し起きる

 

【発症要因】
●60歳以上の男性に多い
●高血圧、糖尿病などの生活習慣病が、最大の発症要因
●遺伝性の脳血管性認知症「CADASIL(カダシル)」もまれに起こる

 

【経過】
●脳血管障害の再発のたびに、認知機能が悪化する
●脳のどの部分の血管が詰まったかで、症状、進行が異なる
●歩行障害、意欲低下が目立つほか、計画・実行能力も損なわれる

4タイプ以外の認知症

認知症の原因疾患は、4タイプで挙げた以外にもたくさんありますが、神経細胞が損なわれることによって起こる「神経変性性認知症」と、それ以外の疾患による「二次性認知症」に分けることができます。

 

神経変性性認知症

●大脳皮質基底核変性症(CBT)
●進行性核上性麻痺(PSP)
●ハンチントン病(HD)
●筋萎縮性側索硬化症(ALS)
●嗜銀顆粒性認知症(AGD)
●石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病(DNTC)
など

 

二次性認知症

●正常圧水頭症(NPH)
●慢性硬膜化血腫(CSH)
●脳腫瘍
●クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)
●その他の全身性疾患(甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症など)

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