アルツハイマー型認知症(ATD)の発症リスク

投稿日:2023.06.08

アルツハイマー型認知症(ATD:Alzheimer-type dementia)のはっきりした病因は、まだ解明されていませんが、ほとんどは家系的な遺伝ではない「孤発性(こはつせい)」によるものです。最近では、糖尿病などの影響が指摘されており、「第三の生活習慣病」とも呼ばれています。ここでは、アルツハイマー型認知症(ATD)の発症を促進する危険因子について、解説します。

もくじ
家族性アルツハイマー型認知症(ATD)の原因遺伝子
孤発性アルツハイマー型認知症(ATD)のリスク遺伝子
アルツハイマー型認知症(ATD)と生活習慣病の関係
そのほかの危険因子

家族性アルツハイマー型認知症(ATD)の原因遺伝子

遺伝性であることがはっきりしている「家族性アルツハイマー型認知症」は、アルツハイマー型認知症(ATD)のうち約1%にすぎません。原因となる遺伝子は、APP(エーピーピー)、PSEN1(プレセリニン1)、PSEN2(プレセリニン2)の3つで、いずれも発症年齢が65歳未満の若年性認知症を引き起こすのが特徴です。

 

APP(エーピーピー)

アミロイドβ(ベータ)の前駆体のタンパク遺伝子です。変異により、アミロイドβの凝集性を高め、産生量を増やします。その結果、老人斑の形成や神経原線維変化を促し、アルツハイマー型認知症(ATD)の発症を促進すると考えられています。この遺伝子による認知症の発症年齢は40〜65歳とされています。

なお、先天性疾患の一種であるダウン症候群の発症原因にも、APP遺伝子が関与しています。そのため、ダウン症候群では、若年性のアルツハイマー型認知症(ATD)を発症することが知られています。

 

PSEN1(プレセリニン1)

APPからアミロイドβを切り出す酵素に関与する遺伝子です。変異により、アミロイドβの凝集性を著しく高め、産生量を増やし、APPと同様、老人斑の形成や神経原線維変化を促します。24〜55歳という早期に認知症を発症します。

 

PSEN2(プレセリニン2)

PSEN1と同じく、アミロイドβを切り出す酵素に関与する遺伝子です。PSEN1に比べると頻度は低く、発症年齢がやや高い(35〜60歳)といわれています。

孤発性アルツハイマー型認知症(ATD)のリスク遺伝子

孤発性のアルツハイマー型認知症(ATD)であっても、遺伝子の影響はゼロではありません。アポリポタンパクE(ApoE:アポイー)という遺伝子には、ε(イプシロン)2、ε3、ε4の3つの型があります。このうち最も多いのはε3ですが、リスク遺伝子であるε4を持つ人は、アルツハイマー型認知症(ATD)の発症が10年早まるといわれています。反対に、ε2を持っていると発症が抑制されます。

自分がApoE遺伝子のε4を持っているかどうかは、遺伝子検査で調べることができます。ただし、日本人の約15%はε4をひとつ以上持つとされていますが、アルツハイマー型認知症(ATD)を発症しない人もいます。遺伝子検査だけで発症予測をすることは難しく、リスク遺伝子を持っているからといって、必ずしもアルツハイマー型認知症(ATD)になるとは限りません。

アルツハイマー型認知症(ATD)と生活習慣病の関係

多くの研究で、中年期の生活習慣病が、高齢期の認知症発症に関与すると報告されています。

特に糖尿病の場合は、発症リスクが約2倍になるといわれています。血糖値をコントロールするインスリンはアミロイドβを分解する作用も持っています。糖尿病があると、この作用が低下するため、アミロイドβが蓄積しやすくなり、老人斑の形成や神経原線維変化が進むと考えられています。

また、高血圧や脂質異常症などがあると、血管が硬くなり、血管内が狭くなります。すると、酸素や栄養素が十分届かなくなり、神経細胞にダメージを与えます。糖尿病も血管障害の一因となります。

そのほかの危険因子

そのほかの危険因子としては、頭部外傷がある場合、女性である場合、加齢が進んでいる場合があげられます。

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