その他の二次性認知症とその症状

投稿日:2023.06.08

二次性認知症の代表といえば、脳血管性認知症(VaD)ですが、ほかにも、過剰な髄液や血腫、腫瘍に脳が圧迫されて、認知症を発症することがあります。ここでは、さまざまな二次性認知症とその症状を紹介します。

もくじ
手術で治せる認知症の代表疾患「正常圧水頭症(NPH)」
高齢者や飲酒する男性に多い「慢性硬膜下血腫(CSH)」
認知症を引き起こすその他の全身性疾患

手術で治せる認知症の代表疾患「正常圧水頭症(NPH)」

正常圧水頭症(NPHnormal pressure hydrocephalus)は、脳内を満たす髄液が過剰になり、脳が圧迫されて起こる疾患です。病気が原因で起こるものを続発性正常圧水頭症、原因不明のものを特発性正常圧水頭症とよびます。

正常圧水頭症(NPH:normal pressure hydrocephalus)の脳では、脳脊髄液の吸収障害により、両側の外側溝(がいそくこう)と両脳室が拡大します。脳頭頂部とクモ膜下腔が狭く小さくなり、脳が圧迫されます。

発症すると、「歩行障害(すり足)」、「認知機能障害」、「尿失禁」という3大症状が順に現れ、数カ月間で急速に進行します。記憶障害や見当識障害は比較的軽いですが、「思考力や注意力低下」、「実行機能障害」、「無関心」といった症状が目立ちます。

脳のダメージが少ない段階なら、根治することも可能です。治療法としては、脳室にたまった髄液を、チューブを介して腹腔などへ流す「シャント手術」が有効です。少量の髄液を腰椎から排出する「タップテスト」で症状が改善すれば、手術の効果が期待できます。

特発性正常圧水頭症(iNPH)の診断基準

ガイドラインでは、possible(疑いあり)、probable(ほぼ確実)、definite(確定)の3段階に分けて基準が示されています。

possible iNPH特発性正常圧水頭症の疑いあり

60歳以降に発症
歩行障害、認知機能障害、尿失禁の1つ以上がある
Evans index(※)>0.3 の脳室拡大
他の疾患では症状を説明できない
脳室拡大をきたす先行疾患がない

probable iNPH特発性正常圧水頭症ほぼ確実

上記1~5を満たす
脳脊髄液圧200mH2O以下
タップテストあるいはドレナージテストで症状が改善

definite iNPH 特発性正常圧水頭症確定

シャント術により症状が改善

※Evans index…脳を水平断でみたときの脳室拡大度の目安。「側脳室前角の左右幅÷大脳の最大左右幅」によって求められる
『特発性正常圧水頭症診察ガイドライン[第2版]』日本正常圧水頭症学会・特発性正常圧水頭症診療ガイドライン作成委員会編、2011より引用

高齢者や飲酒する男性に多い「慢性硬膜下血腫(CSH)」

慢性硬膜下血腫(CSH:chronic subdural hematoma)は、頭部外傷が原因でクモ膜と硬膜のあいだに血腫(血液の固まり)ができ、脳が圧迫される疾患です。60歳以上の高齢者や、大量の飲酒習慣のある男性が多いです。また、すでに認知症を発症していて脳が萎縮していると、血腫を生じやすく、発見も遅れやすいので注意が必要です。

通常、頭部外傷の3週間~3カ月後に「頭痛」や「片麻痺」、「意欲低下」、「見当識障害」などの症状が現れます。ただ、軽くぶつけた程度の衝撃でも起こるため、外傷との因果関係を確認できないケースもあります。

血腫が小さい場合は、自然と吸収されることもありますが、そうでなければ、血腫を取り除く手術を行います。脳のダメージが軽いうちに血腫を除去できれば、脳機能を回復することも可能です。ゆっくり進行する認知症は「脳腫瘍」の疑いあり

脳腫瘍(brain tumor)には、はじめから脳内に発生する原発性のものと、他臓器由来の転移性のものがあります。割合として圧倒的に多いのは、肝がんや肺がんなどの転移性脳腫瘍です。

症状は腫瘍ができた部位によって、さまざまです。「頭痛」、「けいれん発作」、「片麻痺」、「失語」などのほか、「歩くときにフワフワする」といった浮遊感を訴えるケースも多いです。

認知症の症状としては、記憶障害よりも、行動の計画・立案・実行ができなくなる「実行機能障害」や、言葉がうまく出てこない「失語」、基本動作に支障が出る「失行」などが多くみられます。

進行はアルツハイマー型認知症(ATD)に比べるとやや遅めです。ただし、突然発症したり、急速に進行する例もあります。100万人にひとりの難病「クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)」

クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD:Creutzfeld-jekob disease)は、小脳、脳幹、大脳にプリオンという異常なタンパク質が蓄積する、原因不明の神経変性疾患です。ほとんどは孤発性で、発生率は100万人にひとりとまれですが、感染症を持つのが大きな特徴です。国が指定する特定疾患(難病)のひとつでもあります。

発病すると「食欲低下」、「不安」、「倦怠感」、「視覚異常」などの不定愁訴が多くなります。その後、急速に認知症が進行するとともに、手足や顔がピクピク動く「ミオクローヌス」、発話がスムーズにできない「構音障害」、「歩行障害」などが現れます。やがて、自発的な運動や発語がない「言無動状態」となり、1年以内で死に至ります。

脳の萎縮はさほど強くありませんが、脳波や髄液検査で特徴的な初見が現れます。

認知症を引き起こすその他の全身性疾患

認知症を招く全身性疾患のひとつに、「甲状腺機能低下症」があります。原因疾患は橋本病(※)で、女性に多く、活動性や記銘力、集中力が低下し、重症例では徐脈、便秘、脱門なども伴います。アルツハイマー型認知症(ATD)との合併も多くみられます。

また、胃がんなどの治療で胃全摘手術を受けたあと、4年以上経過すると、「ビタミンB12欠乏」から認知症を生じることがあります。四肢の感覚障害からはじまり、運動障害が進行するのが特徴です。

アルコール依存症による「ビタミンB12欠乏」は、意識障害、眼球運動障害などを特徴とする「ウェルニッケ脳症」を引き起こします。回復期には記銘力低下による作話や見当識障害がみられ、これを「コルサコフ症候群」といいます。

なお、まれに「葉酸欠乏」で認知症を生じることもあります。

※橋本病…別名、慢性甲状腺炎。自己免疫の異常が原因で、甲状腺に慢性的な炎症が起きます

キーワード
あわせて読みたい
認知症の定義を知ろう
認知症の種類を知ろう
アルツハイマー型認知症(ATD)とは
アルツハイマー型認知症(ATD)の発症リスク
アルツハイマー型認知症(ATD)の診断基準
アルツハイマー型認知症(ATD)の症状と経過
レビー小体型認知症(DLB)とは

関連記事

みなさまの声を募集しています。

えんがわでは、認知症のご家庭の皆さまと、
認知症に向き合う高い志をもった
医療関係者と介護関係者をつなぎます。
認知症に関するお悩み、みんなで考えていきたいこと、
どんどんご意見をお聴かせ下さい。