認知症いろいろ・気持ちもいろいろ

デイサービスで働き始めて、もうすぐ一年になります。ここでは、1日10名までのお受け入れ。その分、ひとりひとりと向き合う時間がたっぷりあって、以前よりもぐっと深く関われるようになりました。私は看護師として、薬の知識をもとに認知症と向き合ってきましたが、この一年で学んだのは、薬だけでは足りないということ。 医療と介護、両方の視点があってこそ、支えられる「今」があるのだと実感しています。
満足してもらう
●「ちょっと外に出たい」と言われたとき、
「今は無理だから待ってね」と伝えると、たったそれだけで、悲しい顔になってしまうことがあります。
認知症の方にとって「今やりたい」という気持ちは、とても強い。
そのタイミングを逃さずに、できるだけ一緒に歩く。
それだけで、心の距離がぐっと縮まります。
●不安を抱えている方も多いです。
お金のこと、家族のこと、将来のこと。
話をさえぎらず、ただじっくりと耳を傾ける。
それだけで、表情がやわらぎ、「ありがとう」と笑ってくれる瞬間に立ち会うと、こちらまでほっとします。
大切なのは、満足してもらうこと。
「今日、楽しかった」と思ってもらえるかどうか。
それが、明日への元気に繋がる。
安心して、楽しい時間を過ごしてもらうことが、結局はいちばんのケアなのだと思います。
どうしても相性はあります
もちろん、人と人ですから、どうしても相性があります。
無理に距離を縮めようとすると、かえって関係がぎくしゃくしてしまう。
そんなときは、違うスタッフが入ることで、ふっと空気が和らぐこともあります。
無理しない、無理させない。
それもまた、大切なケアのひとつです。
まとめ
やりたいことができる。
不安がなくなる。
満足できる一日を過ごせる。
そんな時間を一緒に積み重ねていきたい。
それが、認知症の進行をゆるやかにする力にもなると信じています。
これからも、「今」を大切にしながら、利用者様と一緒に歩んでいきたいと思います。

日本認知症研究会副代表。看護学校卒業後、内科外来、透析室勤務を経て訪問看護ステーションにて3年間在宅医療に関わり、その後、介護付き有料老人ホームの看護職員として長年務められる。多くの認知症の入居者に携わるうちに、認知症について興味を持ち看護師として貢献できる認知症ケアについて学ばれる。周囲の仲間からは「大将」の愛称で親しまれ、医師主体の研究会の代表を務められた他、中国、イタリアで開催された学会でのご講演など多方面で活躍されている。