日本高血圧学会の治療指針に対する疑義

同学会は7月25日、高血圧の新たな治療指針を発表しました。75才以上の目標値を従来の「140未満/90未満」から10引き下げ、75才未満の目標値と同じ「130/80」にしました。
日本高血圧学会の治療指針
同学会は7月25日、高血圧の新たな治療指針を発表しました。
75才以上の目標値を従来の「140未満/90未満」から10引き下げ、75才未満の目標値と同じ「130/80」にしました。
変更前の基準値でも、高齢者では、意欲低下、うつ、イライラ、転倒、骨折などが多くみられ、脳梗塞のリスクになると言われていました。にもかかわらず、さらに下げるとはいかがのものかと思います。なぜなら、次のような症例をしばしば経験してきたからです。
症例:80代女性
いつも、掃除や洗濯物畳みなどをやっていらっしゃいましたが、ある日、尻もちをついてしまいました。幸い、骨折はありませんでしたが、用心のため施設に入所しました。
入所時、血圧が140でしたが、嘱託医が降圧剤のアムロジピン5㎎を処方しました。
すると、血圧は120台まで下がり、その結果意欲がなくなり、昼間も何もせずにボーッとすることが多くなりました。
1カ月後、退所しましたが、状態は変わりませんでした。
そこで、アムロジピンを中止したところ、ボーっとすることはなくなり、洗濯もの畳みや食後の後片付けもできるようになりました。
80代であれば、降圧剤で血圧が下がりすぎると、脳への血液循環がうまくいかず、脳の活動性の低下を招いてしまいます。

宮崎医科大学医学部卒業。独立行政法人国立病院機構菊池病院(熊本)元院長。熊本県の認知症中核病院の専門医として、熊本県全域から訪れる多くの認知症患者さんを診療され、平成30年に熊本駅前木もれびの森心療内科精神科を開院。食事・サプリメント指導により患者さんの栄養状態を改善し、お薬の量を最小限にされ、精神面の安定・改善をめざす、栄養療法を主体とした副作用の少ない「やさしい医療」を実践されている。